浦和地方裁判所 昭和58年(行ウ)18号 判決 1984年6月11日
原告
川向玲子
右訴訟代理人
北澤義博
同
近藤卓史
同
末吉亙
同
堀裕一
同
三宅弘
被告
埼玉県総務部公文書センター所長
平谷英明
右訴訟代理人
常木茂
同指定代理人
村田浩利
外四名
主文
被告が原告に対してなした昭和五八年六月一五日付行政情報非公開決定処分を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
第一 当事者の求める判決
原告
主文同旨
被告
「原告の請求を棄却する。」
第二 当事者の主張
一原告の請求原因
1 原告は、埼玉県内に住所を有する者であるが、昭和五八年六月一日、被告に対し埼玉県行政情報公開条例(以下「情報公開条例」という。)五条一項に基づき、同年二月一〇日に開催された埼玉県都市計画地方審議会(以下「県審議会」という。)の会議録(以下「本件会議録」という。)のうち、富士見市の都市計画に関する事務局説明部分(以下「本件説明部分」という。)の公開を請求したところ、被告は、原告に対し、本件説明部分が情報公開条例六条二項一号に該当することを理由として、同年六月一五日付で非公開決定処分(以下「本件処分」という。)をした。
2 本件処分の違法性
県審議会の会議録の記載は、情報公開条例六条二項一号の情報に該当しない。
けだし、埼玉県都市計画地方審議会条例(以下「審議会条例」という。)九条による委任を受けて、埼玉県都市計画地方審議会運営規則(以下「運営規則」という。)五条は、県審議会の議事につき合議録を作成すべき旨を規定しているが、これを非公開とする明文の規定が存しないからである。
よつて、原告は、本件処分の取消しを求める。
二被告の認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の主張は争う。
三被告の反論
1 県審議会は、都市計画法七七条一項により都道府県に設置される機関で、同法により審議会の権限とされた事項を調査審議するとともに、都道府県知事の諮問に応じ都市計画に関する事項を調査審議することを目的とするものであつて、県審議会も、同項により設置されたものである。
ところで、都市計画法七七条三項によると、都市計画地方審議会の組織及び運営に関し必要な事項は政令で定める基準に従い、都道府県の条例で定めることとされており、埼玉県では、これに基づいて審議会条例が定められ、更に同条例の委任を受けた運営規則に県審議会の運営についての細目が定められている。そして、運営規則によれば、県審議会の会長は、同審議会の議事につき会議録を作成すべきものとされている(五条)が、他方で同審議会の会議は公開しないものとされている(六条)から、右会議録は、右規則上、公開することができないことが明らかである。
以上のとおり、県審議会の会議録の記載は、情報公開条例六条二項一号の情報に該当すると解すべきものである。
2(一) 県審議会は、都市計画法五条三項及び四項により意見を述べること、同法一八条一項及び一九条三項により県知事の諮問を受けて都市計画の案について審議をすること、その他、建築基準法五一条、土地区画整理法五五条三項及び四項、六九条三項及び四項、住宅地区改良法四条三項、土地改良法一二五条の二などの規定により意見を述べ、あるいは審議することなどの権限を有するものであるが、このような権限を行使するに際しては住民、利害関係人又は参考人の意見を聴取するのが常である。しかるに、これら住民、利害関係人又は参考人は、運営規則に会議非公開の定めがあるため、会議で述べた自己の意見が事後に公開されることはないものと予期しているのであつて、仮に、審議会の会議録が公開され、これら住民、利害関係人あるいは参考人の意見が公表されることになると、彼らの右のような期待を裏切ることになり、妥当でないと考えられる。このことは、情報公開条例の委任に基づいて実施機関である埼玉県知事が定めた埼玉県行政情報公開実施要綱(昭和五八年三月三一日埼玉県等告示第一号)においても、公開しないことを条件として提供された情報を「その他公開することにより行政の公正かつ円滑な執行に著しい支障を生ずることが明らかである情報」として、公開しないことができる行政情報に該当するとしていることに照らしても明らかである。
(二) 県審議会の委員は、学識経験者、関係行政機関の職員、市町村長の代表者、県議会の議員及び市町村議会の議長の代表者により構成されているが、これらの委員は、県審議会の会議録が公開されると、そこにおける発言を理由として攻撃を受けることがあり得るため、公正な意見が述べられなくなる。とくに、右委員のうち市町村長の代表者、県議会の議員及び市町村議会の議長の代表者は、対立政党、更には自己所属の政党からの批判を恐れて、公正な意見を表明できない場合があり得る。
(三) 県議会の会議録は、運営規則により、県審議会の内部資料として作成されているにすぎず、もともと法律あるいは条例により作成を義務づけられているわけではないから、仮に内部資料であつても公開すべきものとするならば、将来は作成されなくなるか、あるいは作成方法が変更されることになると考えられる。このように、法律又は条例の規定により作成を義務づけられていない内部資料については、これを公開すべきものとしてみても、結局は無意味である。
以上の諸理由により、県審議会の会議録の記載は、情報公開条例六条一項五号の情報に該当すると解すべきである。
よつて、被告のなした本件処分は、何ら違法性を帯びるものではない。
四原告の認否及び反論
被告の反論は争う。
1 被告は、県審議会の会議が非公開であるから、本件会議録も非公開とすべきものである旨主張するけれども、およそ、会議の非公開と会議録の非公開は不可分のものではない。たとえば、憲法五七条二項、国会法六三条は、国会の議事が秘密会でなされた場合でも、その会議録は公開されることがありうることを当然の前提としているのである。したがつて、被告の右主張はその前提においてすでに失当である。更に、会議を公開すると、審議の公正が害され、妥当な結論を得ることが阻害されるなどの理由により、会議を非公開とせざるをえないような場合があるとしても、このような場合にこそ、事後的にチェックが不可欠なのであつて、その会議録を公開すべき要請は一層強いといえるから、県審議会の会議録は、公開されるべきである。
2 処分理由の追加について
情報公開条例一〇条四項は、非公開決定に理由付記を義務づけている。一般に法規が行政処分に理由付記を要求している趣旨・目的は、処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて、不服申立てに便宜を与えることにある。したがつて、理由付記を欠いた処分が違法であることはもちろんであるが、訴訟段階になつて、新しい処分理由を追加することを認めることは、処分時に理由を付さずに、あるいは、適当な理由を付しておいて、訴訟で争われてから初めて理由を付することを認めるに等しく、前記理由付記を要求した法の趣旨・目的を全く失わせることになり許されないと解すべきである。
しかるに、被告は、本件会議録の記載が情報公開条例六条二項一号の情報にあたるという理由のみにより本件処分をしたにも拘わらず、本件訴訟に至つて、本件会議録の記載が、同条例六条一項五号の情報にあたるという新たな理由を追加して本件処分の適法性を基礎づけようとしているが、かかる主張は許されないと解すべきである。
第三 証拠<省略>
理由
一埼玉県内に住所を有する者である原告が、昭和五八年六月一日被告に対し、情報公開条例五条一項に基づき、本件会議録のうち本件説明部分の公開を請求したところ、被告が本件説明部分が同条例六条二項一号に該当する行政情報であることを理由として、同年同月一五日付でこれを公開しないこととする旨の本件処分をしたことは、当事者間に争いがない。
二当裁判所に顕著な事実と<証拠>によれば、現代国家における国民主権の原理の具体化の一つとして欧米諸国で発達を遂げたいわゆる情報公開制度(国又は地方自治体などが保有する行政情報を国民又は住民などの請求に応じて公開することを制度的に保障すること)は、近時我が国においても主として地方公共団体のレベルにおいて実現の動きが活発化していること、埼玉県は、昭和五三年一〇月に「埼玉県長期構想」を策定したが、そこでは同県が達成すべき主要目標の一つとして、「自治と連帯による県づくりを進めること」が掲げられ、その具体策として、県民の県政への参加を推進することと県政についての情報を県民に公開することが唱われており、情報公開制度の採用の方向が示されたこと、このため埼玉県では、昭和五四年から情報公開制度の実現に向つて制度の検討に着手し、同五六年七月には県行政情報公開準備検討委員会の報告を、同五七年八月には、学識経験者、報道関係者、各種団体の代表者等を構成メンバーとする県行政情報公開懇話会の提言をそれぞれ得て、情報公開制度実現への準備を積み重ねてきたが、同年同月「埼玉県行政情報公開推進基本計画」(以下「基本計画」という。)を発表して、県民に対して情報公開についての具体的プランを提示したこと、かくして、昭和五七年一二月県議会定例会において情報公開条例が可決され、同五八年六月一日から施行をみるに至ったが、この条例制定は、同年四月一日から施行された神奈川県情報公開条例に次ぐ、県レベルでは全国で二番目の画期的な試みとして、社会の耳目と関心を集めたことが認められる。
2そこで、情報公開条例の内容に少しく立ち入つてみると(なお、同条例の全文を別紙1に掲記する。)、まず、同条例の目的は、「県民の行政情報の公開を求める権利を保障することにより、県政の公正な執行と県民の信頼の確保を図るとともに、県民の県政参加を一層推進し、もつて地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与すること」にある(一条)。右にいう「行政情報」の意味については二条一項に定義規定があり、これによると、「行政情報」とは、県の機関が作成した文書(磁気テープ、フィルム等を含む。以下同じ。)で、決裁が終了したもの、県の機関が入手した文書で、受理等の手続が終了したものであつて、県の機関が保管しているもの(以下「公文書」という。)に記載された情報である。そして、県民(県内に住所を有する個人及び法人その他の団体を指す。三条一項)は、実施機関(知事、公安委員会を除く各委員会、監査委員及び公営企業管理者を指す。二条二項)に対し、当該実施機関の権限に属する事務に係る行政情報の公開を請求する権利を有する(五条一項)のであるが、実施機関は、六条一項各号に該当する行政情報についてはこれを公開しないことができるし、また、同条二項各号に該当する行政情報についてはこれを公開しないものとされる。しかし、他方、県には、県民の行政情報の公開を求める権利が適正に保障されるように、この条例を解釈し、運用すべき一般的責務があり(三条一項)、また、実施機関は、六条一項各号に該当する行政情報であつても、期間の経過により右各号の規定に該当しなくなつたときは、これを公開しなければならず(同条三項)、「公文書」が同条一項又は二項に規定する行政情報を記録した部分とその他の部分とから成る場合において、これらの各部分を容易に分離できるときは、当然その他の部分に記録された行政情報を公開しなければならない(同条四項)のである。更に、実施機関から公開請求にかかる行政情報の公開を拒否された県民に対する簡易迅速な救済方法も講じられることになつている(一三条)。
三1被告は、県審議会の会議は、審議会条例及び運営規則により非公開とされているから、本件会議録の記載は情報公開条例六条二項一号に該当し、被告においてこれを公開しないことができるものである旨主張するところ、審議会条例は、県審議会の組織及び会議の方法についての大綱を定めたうえ、その九条で、県審議会及び常務委員会の運営に関する細目の決定を同会長に委任し、これに基づいて同会長が定めた運営規則五条一項は、同会の議事につき会議録を作成すべきものとし、その六条で同会の会議は公開しないものとする旨規定する。
ところで、被告の右主張は、およそある会議体の議事を非公開とすることは、当然に当該会議の会議録も非公開であることを意味するとの立論を前提とするものと解されるけれども、右の立論を肯認することはできない。けだし、一般に会議体の議事を非公開とすることの主眼は、これが公開されると、会議体の出席者が、往々にして傍聴人や報道関係者(以下「傍聴人等」という。)から心理的圧迫を受けて自由な意見交換ができなくなり、又は傍聴人等に迎合するような質疑発言をなす虞れがあるため、このような事態を回避し、出席者が議事に専心できるようにして審理の充実を図ること、換言すれば、会議体の審理の実質化を図ることにあると解されるのであつて、会議の非公開とその会議の経過や結果を記録した会議録を事後的に開示することとは事柄の性質上両立しえないではないと考えられるからである。我が国の法制をみても、例えば、憲法五七条二項、国会法六三条は、国会が秘密会を開いた場合においても、その会議録のうち特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公開すべき旨を規定しており、この一事からも、会議の非公開が当然にその会議の会議録の非公開を帰結するものではないことが窺われるのであつて、現に、<証拠>によれば、埼玉県と同様、都市計画地方審議会の会議を非公開としている神奈川県においては(同県都市計画審議会条例八条、同県都市計画審議会運営規則三条)、同県情報公開条例に基づく請求により右審議会の会議録の一部が公開された実例があることが認められるのである。
のみならず、情報公開条例の解釈上も、被告の右主張は採ることができない。すなわち、前記認定のような情報公開条例制定の動機及び経過並びに前掲の同条例の条文内容に照らしてみると、同条例は、「公文書」の形式で存在する行政情報は原則として全部公開するという理念を基本とするものであることが明らかであり、<証拠>によれば、前記基本計画においては、このことが明示されていることが認められるのである。被告が援用する情報公開条例六条二項一号は、「法律又は条例の規定により明らかに公開することができないとされている情報」は実施機関においてこれを公開しないものとする旨規定しているが、右の条文も同条例の右基本理念に即して厳格に解釈されなければならず、したがつて、県審議会の会議録の公開性が排除されているというためには、その旨が法律又は条例に明文をもつて規定されているか、少なくともその旨が法律又は条例の当然解釈として肯認できる場合でなければならないというべきであつて、審議会条例の委任を受けた運営規則に県審議会の会議を非公開とする旨の規定があることの一事をもつて、同会の会議録の記載が情報公開条例六条二項一号の行政情報に該当するとは到底いえない。
2次に、被告は、本件会議録の記載は情報公開条例六条一項五号の行政情報に該当するとし、その論拠を被告の主張2(一)ないし(三)のとおり主張する。被告がなした本件処分は、本件会議録の記載が情報公開条例六条二項一号に該当することを理由とするものであることは(同条例一〇条四項は、実施機関が請求に係る行政情報を公開しないことと決定したときは、その理由を記載した書面をもつて請求者にその旨通知すべきことを義務づけている。)前記のとおり当事者間に争いがないから、被告の右主張は本訴において本件処分の理由を新たに追加するものに外ならない。このように、処分の通知に理由附記が要求されている場合に、当該処分の取消訴訟において処分理由を追加することが許されるか否かは一の問題たるを失わないが、この点の判断は別としても、被告の右主張もまた次のとおり理由がない。
すなわち、情報公開条例六条一項は、実施機関において公開しないことができる行政情報を一号から五号まで列記し、その五号に「その他公開することにより行政の公正かつ円滑な執行に著しい支障を生ずることが明らかである情報」を掲げているが前述した同条例の基本理念に則り、かつ、同号に先立つ各号に列記された各情報の種類、性質に鑑みるときは、ある情報が右五号に該当するというためには、それを公開することが、単に実施機関の主観において「行政の公正かつ円滑な執行に著しい支障を生ずる」と判断されるだけでは足りず、そのような危険が具体的に存在することが客観的に明白であることを要するといわなければならない。しかるに、、前記被告の論拠のうち(一)及び(二)は、いずれも審議会の会議録の公開により生ずると想定される一般的かつ抽象的な行政執行上の支障を指摘するに止まり(加えて、その主張にかかる支障も必ずしも通常生起しうるものとは考え難い。)、本件会議録中の本件説明部分が前述のような意味における情報公開条例六条一項五号の規定に該当するゆえんについての具体的摘示を欠くものであり、又、「公開しないことを条件として提供された情報」がそれ自体情報公開条例六条一項五号の情報に該当するとの被告主張は、会議録の非公開を明示しない県審議会の議事、就中、本件説明部分につき適切であるかはさておき、行政庁の情報入手の便益を不当に重視して、情報公開制度潜脱の口実を与え、右制度の意義の大半を失わせる危険をもたらすもので到底採ることができない。したがつて、前記被告の主張の論拠(一)及び(二)はいずれも失当である。
更に、被告の右主張の根拠のうち(三)において、法律又は条例上の作成義務がない内部資料についても公開すべきものとすると、将来そのような資料が作成されなくなるか、作成方法が変更されることになるから、その公開を義務づけても無意味であるとする点は、これを文字通りに理解する限り、情報公開制度の趣旨を没却しかねない筋違いの論理と許さざるを得ないけれども、これを善解するならば、行政意思の形成過程に関する情報を公開することは、「行政の公正かつ円滑な執行に著しい支障」を生ぜしめることになるとの指摘を含むようにも思われる。たしかに、ある行政主体が情報公開制度を採用する場合、どの範囲の情報を公開するものとするかは挙げて立法政策の問題であるから、その選択肢の一つとして決定された行政意思についての情報(その代表例が決裁文書)のみを公開し、行政意思の形成過程に関する情報は非公開とする制度を採ることも固より可能である。しかしながら、公開すべき情報の範囲は、情報公開制度の根幹を成す要素であるから、仮に情報公開条例が右に述べたような制度を予定しているものとすれば、同条例中にその旨を明文で規定したはずであつて、六条一項五号に行政意思の形成過程に関する情報の公開性を一切排除する根拠条文というほどに重要な意味を持たせているとは到底解しえない。かえって、前述のような情報公開条例の基本理念並びに同条例の条文構造及び内容に徴すれば、同条例は、行政意思の形成過程における情報の公開についても積極姿勢を示していることが明らかである。ことに、都市計画地方審議会の権限とされる事項については、関係者間の激しい利害の対立、錯綜が予想され、そのことが地方自治体の行政意思形成の過程に審議会の議を経るものとした理由の一つであり、審議会の議事を住民意思に根ざしたものとするには、かかる意思形成の過程における情報の公開が不可欠な手段であつて、また、一面地方自治体の行政が陥りがちな、腐敗、事大・形式主義や技術的専門的事項であるための住民意思からの離反などの諸弊害に対する有効な対応手段ともいえる。その意味で、かような場合における情報の公開こそ、情報公開条例の理念に合致し、地方自治法からも明らかな国政以上に要求される住民の直接参加など、憲法の定める地方自治(住民自治)の本旨の具現の基礎として最も重要なものと考えられる。もとより、かような情報の公開の結果として生ずべき弊害についての配慮を一般に不要視すべきでないが、さきに述べたとおり、情報公開条例は、その六条一項一号の場合を除いては、情報の公開による支障害悪の明らかなものに限つて、実施機関の判断による公開しない処分を認め、その他の場合には条例の明文をもつてのみ公開を拒みうるとしているのである。したがつて、前記被告の(三)の論拠もまた当を得ないというべきである。
四以上の次第で、被告は情報公開条例の解釈を誤り、原告の正当な請求を容れなかつたのであるから、本件処分は違法である。よつて、原告の本訴請求を正当として認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(高山晨 小池信行 深見玲子)
別紙1
埼玉県行政情報公開条例
(目的)
第一条 この条例は、県民の行政情報の公開を求める権利を保障することにより、県政の公正な執行と県民の信頼の確保を図るとともに、県民の県政参加を一層推進し、もつて地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において「行政情報」とは、次に掲げる文書(磁気テープ、フィルム等を含む。以下同じ。)で、県の機関が保管しているもの(以下「公文書」という。)に記録された情報をいう。
(1) 県の機関が作成した文書で、決裁が終了したもの
(2) 県の機関が入手した文書で、受理等の手続が終了したもの
2 この条例において「実施機関」とは、知事、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、地方労働委員会、収用委員会、内水面漁場管理委員会及び公営企業管理者をいう。
(県の責務)
第三条 県は、県民の行政情報の公開を求める権利が適正に保障されるように、この条例を解釈し、運用するとともに、公文書の保管と検索体制の確立に努めるものとする。
2 県は、この条例の解釈及び運用に当たつては、通常他人に知られたくない個人に関する情報が十分に保護されるように配慮するものとする。
(県民の責務)
第四条 県民は、この条例の目的に即して、行政情報の公開を求める権利を行使するとともに、その権利の行使によつて得た行政情報を適正に用いるものとする。
(公開の請求等)
第五条 県内に住所を有する個人及び法人その他の団体(以下「県民」という。)は、実施機関に対し、当該実施機関の権限に属する事務に係る行政情報の公開を請求することができる。
2 実施機関は、県民以外の者から行政情報の公開の申請があつた場合においても、その公開に努めるものとする。
(公開しないことができる行政情報等)
第六条 実施機関は、次の各号の1に該当する行政情報は、公開しないことができる。
(1) 通常他人に知られたくない個人に関する情報
(2) 法人その他の団体に関する情報又は個人の事業に関する情報であつて、公開することにより当該法人等に著しい不利益を与えることが明らかであるもの(当該法人等の違法又は著しく不当な行為に関する情報及び人の生命、健康又は身体の安全に影響を及ぼすおそれがある事項に関する情報を除く。)
(3) 県の機関の事務事業の執行過程において作成し、又は入手した情報であつて、公開することにより、当該事務事業の執行に係る公正な意思決定に著しい支障を生じ、又は当該事務事業の執行を著しく困難にすることが明らかであるもの
(4) 犯罪の捜査、争訟又は行政上の義務違反の取締りその他公共の安全と秩序の維持に関する情報及び公開することにより人の生命、身体又は財産の保護に支障を及ぼすおそれがあることが明らかである情報
(5) その他公開することにより行政の公正かつ円滑な執行に著しい支障を生ずることが明らかである情報
2 実施機関は、次の各号の1に該当する行政情報は、公開しないものとする。
(1) 法律又は条例の規定により明らかに公開することができないとされている情報
(2) 主務大臣等から、法律の規定に基づき、公開しないように指示があつた情報
3 実施機関は、第一項に規定する行政情報であつても、期間の経過により同項各号のいずれにも該当しなくなつたときは、公開しなければならない。
4 実施機関は、公文書が第一項又は第二項に規定する行政情報を記録した部分とその他の部分とからなる場合において、これらの部分を容易に分離できるときは、当該その他の部分に記録された行政情報を公開しなければならない。
(自己情報の公開請求)
第七条 実施機関は、前条第一項の規定にかかわらず、同項第一号に該当する行政情報について、本人から公開の請求があつた場合は、当該行政情報を公開しなければならない。ただし、当該行政情報が同項第二号から第五号までの一に該当するときは、この限りでない。
(公文書目録等の作成及び閲覧)
第八条 実施機関は、公文書の目録等公文書を検索するための資料を作成し、県民の閲覧に供しなければならない。
(公開請求の方法)
第九条 第五条第一項の規定による公開の請求(以下「公開請求」という。)は、実施機関が定める様式による書面を提出してしなければならない。ただし、実施機関が当該書面の提出を要しないと認めたときは、この限りでない。
(公開等の決定及び通知)
第一〇条 実施機関は、公開請求があつたときは、その公開請求を受けた日から起算して一五日以内に、当該公開請求に係る行政情報を公開するかどうかを決定しなければならない。
2 実施機関は、前項の期間内に同項の決定をすることができないときは、その期間を延長することができる。この場合において、実施機関は、当該延長の理由及び決定をすることができる時期を公開請求をした者(以下「請求者」という。)に速やかに通知しなければならない。
3 実施機関は、第一項の決定をしたときは、速やかに当該決定の内容を請求者に通知しなければならない。
4 実施機関は、公開請求に係る行政情報を公開しないことと決定したときは、その理由を記載した書面により、前項の通知をしなければならない。この場合において、公開しないことと決定した行政情報が一定の期間の経過により第六条第一項に規定する行政情報に該当しなくなることが明らかであるときは、併せてその該当しなくなる時期を記載しなければならない。
(公開の実施及び方法)
第一一条 実施機関は、公開請求に係る行政情報を公開することと決定したときは、請求者に対し、速やかに当該行政情報を公開しなければならない。
2 行政情報の公開の方法は、公文書の閲覧、写しの交付又は視聴取とし、請求者の求める方法によるものとする。
3 実施機関は、請求者が公文書の写しの交付又は視聴取を求めた場合において、写しを交付し、又は視聴取をさせることが困難であるときは、他の公開の方法により公開することができる。
4 実施機関は、公文書の保管のため必要があるとき、その他相当の理由があるときは、その写しにより閲覧又は視聴取をさせることができる。
5 公文書の閲覧又は視聴取は、実施機関の定めるところに従い、行わなければならない。
(写しの交付の費用負担)
第一二条 公開請求又は第五条第二項の公開の申請により公文書の写しの交付を受ける者は、当該写しの作成及び送付に要する費用を負担しなければならない。
(救済機関)
第一三条 知事は、この条例による行政情報の公開に関し、公正かつ簡易迅速に救済を図るための機関(以下「救済機関」という。)を設けるものとする。
2 救済機関は、行政情報を公開しないこととする決定等について、請求者の申立て等に基づき、実施機関に対し、是正その他の措置をとるように勧告することができるものとする。
3 実施機関は、前項の規定による救済機関の勧告があつたときは、当該決定等について、是正その他の措置をとるように努めなければならない。
(公開の実施状況の公表)
第一四条 知事は、毎年度この条例による行政情報の公開の実施状況を公表するものとする。
(他の法令による閲覧等の取扱い)
第一五条 他の法令の規定により、実施機関に対し、公文書の閲覧又は写しの交付を求めることができる場合における当該閲覧又は写しの交付については、当該法令に定めるところによる。
(適用除外)
第一六条 この条例は、埼玉県立文書館、埼玉県立図書館その他の県の機関が県民の利用に供することを目的として保管している文書に記録された情報については、適用しない。
(要任)
第一七条 この条例の施行に関し必要な事項は、実施機関が定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、昭和五八年六月一日から施行する。
(経過措置)
2 この条例は、次に掲げる公文書に記載された情報について適用する。
(1) 昭和五八年四月一日以後に県の機関が作成し、又は入手した公文書
(2) 昭和五八年三月三一日までに県の機関が作成し、又は入手した公文書で、その目録が整備されたもの
3 この条例は、出先機関(教育委員会所管の機関にあつては、本局以外の教育局及び埼玉県立文書館以外の教育機関)が保管している公文書に記録された情報については、前項第一号の規定にかかわらず、知事が定める日までの間、目録が整備された公文書に記録されたものに限り、適用する。
別紙<参考>
埼玉県都市計画地方審議会条例(昭和四十四年七月二日条例第四十九号)
(趣旨)
第一条 この条例は、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第七十七条第三項の規定に基づき、埼玉県都市計画地方審議会(以下「審議会」という。)の組織及び運営に関し必要な事項を定めるものとする。
(組織)
第二条 審議会は、次に掲げる者につき、知事が任命する委員をもつて組織する。
一 学識経験のある者 七人以内
二 関係行政機関の職員 八人以内
三 市町村の長を代表する者 二人以内
四 県議会の議員 八人以内
五 市町村の議会の議長を代表する者 二人以内
2 前項第二号に掲げる者につき任命される委員の任期は、二年とする。ただし、当該委員が欠けた場合における補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 隊員は、再任されることができる。
(臨時委員及び専門委員)
第三条 審議会に、特別の事項を調査審議させるため必要があるときは、臨時委員若干人を置くことができる。
2 審議会に、専門の事項を調査させるため必要があるときは、専門委員若干人を置くことができる。
3 臨時及び専門委員は、知事が任命する。
4 臨時委員は当該特別の事項に関する調査審議が終了したとき、専門委員は当該専門の事項に関する調査が終了したときは、解任されるものとする。
(会長)
第四条 審議会に会長を置き、第二条第一項第一号に掲げる者につき任命された委員のうちから委員の選挙によつてこれを定める。
2 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
3 会長に事故があるときは、会長があらかじめ指名する委員がその職務を代理する。
(会議)
第五条 審議会の会議は、会長が招集し、その議長となる。
2 審議会は、委員及び議事に関係のある臨時委員の二分の一以上が出席しなければ会議を開くことができない。
3 審議会の議事は、出席した委員及び議事に関係のある臨時委員の過半数をもつて決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
(常務委員会)
第六条 審議会は、その権限に属する事項で軽易なものを処理させるため、常務委員会を置くことができる。
2 常務委員会は、会長及び会長の指名する委員九人以内をもつて組織する。
3 前条の規定は、常務委員会に準用する。
(幹事)
第七条 審議会に、幹事若干人を置く。
2 幹事は、県職員のうちから知事が任命する。
3 幹事は、会長の命を受け、審議会の事務を処理する。
(庶務)
第八条 審議会の庶務は、住宅都市部において処理する。
(委任)
第九条 この条例に定めるもののほか、審議会及び常務委員会の運営に関し必要な事項は、会長が審議会にはかつて定める。
附則
この条例は、公布の日から施行する。
別紙<参考>
埼玉県都市計画地方審議会運営規則
(昭和四十四年九月四日埼都審規則第一号)
第一章 総則
(趣旨)
第一条 この規則は、埼玉県都市計画地方審議会条例(昭和四十四年県条例第四十九号。以下「条例」という。)第九条の規定に基づき、埼玉県都市計画地方審議会(以下「審議会」という。)及び埼玉県都市計画地方審議会常務委員会(以下「常務委員会」という。)の運営に関し必要な事項を定めるものとする。
(会長及び会長職務代理者の任期)
第二条 会長及び会長職務代理者の任期は、二年とする。ただし、会長が欠けた場合における新たに選任された会長の任期は、前任者の残任期間とする。
(代理)
第三条 条例第二条第一項第二号に掲げる者につき任命された委員に事故があるときは、当該行政機関におけるその者の職務を代理又は補佐する者は、議事に参与し、決議の数に加わることができる。
第二章 会議
(招集)
第四条 会長は、審議会又は常務委員会開催の日の三日前までに、招集の日時、場所及び会議の事項を委員及び臨時委員に通知しなければならない。ただし急施を要する場合は、この限りでない。
(会議録)
第五条 会長は、次に掲げる事項を記載した会議録を作成しなければならない。
一 案件の内容
二 会議の日時及び場所
三 出席及び欠席した委員及び臨時委員の氏名
四 審議の経過
五 賛否の数
2 会議録には、会長の指名した二人以上の委員が署名しなければならない。
(会議の非公開)
第六条 審議会及び常務委員会の会議は、公開しないものとする。
(参考人)
第七条 会長が必要と認めるときは、参考人の出席を求め、意見を聞くことができる。
第三章 常務委員会
(権限)
第八条 常務委員会は、審議会が委任した事項について、審議会が有する権限と同様の権限を有する。
(組織)
第九条 常務委員会は、会長及び次の各号に掲げる委員のうち会長の指名する委員をもつて組織する。
一 学識経験のある者 二人以内
二 関係行政機関の職員 二人以内
三 市町村の長を代表する者 一人以内
四 県議会の議員 二人以内
五 市町村の議会の議長を代表する者 一人以内
(会長)
第十条 会長は、審議会の会長をもつてこれにあてる。
2 会長は、会務を総理する。
3 会長に事故あるときは、あらかじめ会長の指名する委員がその職務を代理する。
第四章 雑則
(委任)
第十一条 この規則に定めるもののほか、この規則の施行に関し必要な事項は会長が定める。
附則
この規則は、昭和四十四年九月四日から施行する。